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ヴィリ (MFコミックス)
山岸凉子

定価: ¥ 650
販売価格: ¥ 650
人気ランキング:
おすすめ度:

発売日: 2007-10-23
発売元: メディアファクトリー
発送可能時期: 通常24時間以内に発送
見事なリベンジ
本屋で見かけたのに、一度はスルーしたのです。
テレプシは、わっくわくさせてくれたマンガだったけど、結局広げた
風呂敷をたたみきれず、ヒロインの一人を死なせて半ば投げ出すように
終わってしまったでしょ。その直後にまたバレエですか、ちょっとつき
あいきれないですよ、という意識でした。
まあ、つれ合いが代金は出すというので、買ったのだけど、おかげさまで
いいマンガを読み逃さずにすみました。
今度は一冊の分量できっちり計算して、大団円へ。今時のTVドラマの
ようなジェットコースター感覚も入る、テンポの速さ。しかも題材はマ
ンガ家生活38年の中で培ったきた、もっとも得意とするものばかり。集
大成といっていい単行本になってます。
お見事でした。完璧なリベンジです。悔い改めました。次の本はスルー
なんかしません。
山岸凉子、ホームグラウンドに帰還
大作「テレプシコーラ」第1部を完結させて間もないというのに、またもや新作がリリースです。でも、なんとなくこのハイペースの理由が感じられます。
思えば「テレプシ」は山岸先生のキャリアの中ではかなり異色のものでした。バレエを題材にしていますが、ロマン的色彩の濃い「アラベスク」とはまったく違う、むしろ「メタモルフォシス伝」に近い、時代のリアルな空気を反映させたティーンエイジャーたちの物語でした。これに似た感じがするのは短編「鬼子母神」くらいかな?
そう考えると、43歳のバレエダンサーを主人公にした本作は、ティーンを描き続けたことで溜まった“違う女性像を描きたい”という創作衝動が一気に溢れ出したものかもしれません。その証拠に、「テレプシ」では封印していた山岸作品のモチーフが次々に登場します。
90年代、山岸先生は成熟した女性の視点から作品を描き続けてきました。とくに不倫の恋に象徴される人間の業や、年をとることへの躊躇、自分の弱さを受容するといった成長との格闘が、よくテーマになってたと思います(文春文庫『ブルー・ロージス』はその代表だと思います。大好きです)。
本作の主人公は、迫り来る“老い”と格闘する、かつての天才ダンサーです。いわば、山岸漫画がひさびさにホームグラウンドに帰ってきた感じ。懐かしいモチーフが次々に奏でられます。恋に狂う女の性、連鎖する母と娘との葛藤、セックスの暴力性、そしてオカルト。そう、久しぶりにオカルト・スピリチュアルな山岸作品が読めるのです!
「テレプシコーラ」はタイトルどおり、踊りの神に帰依する少女たちの物語でした。本作「ヴィリ」もタイトルどおり、“女”である自分に苦悩する存在を描く作品です。山岸先生の作品構築にはぶれがありません。いやー、久々に山岸作品らしい心理劇を読んだな、と満足しました。それでいて新境地なんですよね。240ページという、コンパクトかつ十分なボリュームで展開される、サスペンスフルな心理ドラマを、ぜひご鑑賞ください。
女性性、特に女性の自己実現をバレエから見ると・・・
山岸良子の初期の代表作、「アラベスク(第1部・第2部)」、そして心理的な描写に凄みの掛かっていた頃の「黒鳥(ブラックスワン)」、最近の大作「舞姫(テレプシコーラ)」後の最新作が、この作品。
バレエを通じて様々な人生、特に女性の成長・自己実現の過程を描いてきた筆者の、今回の主人公は43歳の中年女性。これが従来のヒロインともっとも異なる点であろう。
主人公の脂の乗り切った熟練のバレリーナとしての側面は、仕事を持つ女性としては輝いている。しかし、家庭的には海外で不倫の末のシングルマザーであり、思春期の1人娘とはギクシャクしている。実は満たされないものを抱えている自分、ありのままの女性性を受け止めてくれる男性を求める姿が華やげば華やぐほど、後半の展開に息を呑む。
娘に恋人を奪われるという衝撃的な展開、呑み込む母性と逆らう娘の対比、生と死、死と再生のストーリー運びは見事。主人公がそれまでの世界を喪失する場面は、若い読者には理解できないのではないかと思えるほどの生々しさ、痛々しさだ。
自己実現の背景にある世代を超えた親子関係の葛藤、年齢・性、老い。悲劇的な現実を受け入れ、老いを見つめる過程にも人間の成長はあるという明るい側面を描かれているものの、人生の奈落を舞台事故を借りて象徴的に描くところに、人間描写の鋭さ・怖さがある。
結婚できないままウィリー(ヴィリ)となるジゼル、生きることのできない半身、生身の代償とは何なのか。往年のファンも中年クライシスに直面している世代なだけに、身につまされる内容。大人向きの内容です。
